今だから言いたい‼ 不登校のこと

小4から中3までの5年にわたる娘の不登校。不安、悲しみ、怒り・・・そして感謝。

「ボロ布でもかけときますね」

「ボロ布でもかけときますね。」

 

これは、娘が小学6年生になってすぐの頃、当時の教頭先生の口から出た言葉です。

 

その日、娘と私は学校の「心の教室相談員」※のところに会いに行きました。

以前から担任の先生などから会ってみるように勧められていましたが、学校に

行くこと自体嫌だったことと、あまり人に会いたがらなかったのもあり、なかなか

実現しませんでした。

しかし、この日はやっと重い腰を上げてくれたのでした。

 

他の児童に見られたくないというので、授業が始まった後に登校しました。

相談室の場所は職員室のある棟の2階にあり、図書室のすぐ近くにありました。

隣の棟は普通の教室が入っている棟でしたので、相談室の窓から見える状態でした。

しかし、窓ガラスの半分下が曇りガラスになっていたため、椅子に腰かけると

向こうからは見えませんでした。

 

相談員の方とは、今、どのようなことをしているか、どんなことをしていると

楽しいか、勉強はどうやっていこうか、など話をしていました。

 

しばらくすると、ガヤガヤと子供たちの声が近づいてきます。

その時、娘の表情がサッと変わりました。

廊下の方をみると、子供たちがぞろぞろと歩いています。図書室へ移動して

いたのです。

 

廊下側の窓には、目隠しの布をかけてありましたが、窓の半分までしかなく

かけてある布もだいぶ古いようで、取れかかっているところもありました。

通りすがり、何人か相談室をのぞき込んでいました。

娘は廊下と反対側に顔を向け、見られないようにしていました。

 

その様子を見た相談員の方が、今度までに布を準備してもらうように

しようね、と優しく声を掛けてくださいました。

 

相談員の方の窓口は教頭先生でしたので、相談が終わると教頭先生のところに

一緒に行き、報告してから帰宅することになっていました。

3人で職員室に行き、教頭先生に声を掛け、簡単に相談内容の報告をしました。

そして、相談員の方が相談室の窓の布が取れているため、対策をお願いされました。

 

すると教頭先生は、

 

「あーじゃあそのへんのボロ布でもかけときますね。」

 

笑いながら言われたのです。

 

 

娘の小学時代で一番衝撃的な出来事でした。

 

この教頭先生は女性の方で、見るからにサバサバした感じでした。

きっと、『普通ではない』子の対応をしなければならないのが面倒だった

のでしょう。つい出てしまった言葉だと思いますし、何も気にされなかった

と思います。

私も相談員の方も、苦笑するしかありませんでした。

 

教頭先生になるほどの経験がある方なのに、学校に行きたくても行けない子の

気持ちが、理解できないのでしょうか。

繊細で人の目が気になり、マスクを外すことができない子の気持ちがわからない

のでしょうか。

 

後になって悔しさがこみ上げてきました。

娘が相談室に行くことは二度とありませんでした。

 

正直、思います。

学校の先生は、『普通の』児童・生徒の指導をするのが限度だと。

『普通ではない』児童・生徒の対応をする余裕なんかないのです。

 

 

※「心の教室相談員」:  1998年にスクールカウンセラーとは別に生徒が悩みを気楽に話せ、ストレスを

           和らげることのできる第三者的存在として文科省が始めた取り組みですが、

           2002年より各自治体に委託されたため、すべての小・中学校に設置されているわけ

           ではないようです。